<思い返される三洋証券の破たん> 1997年に始まった日本の金融危機は、最初に業界中堅の証券会社であった三洋証券の倒産がきっかけとなった。この証券会社の規模自体は、決して巨大ではなく、それだけで日本の金融システムを破たんに追い込むようなものではなかった。 だが、コール市場(金融機関相互の短期資金市場)の参加者であった三洋証券を、事業会社を前提とした当時の破産法制の下で処理したため、一時的とはいえ、債務不履行が生じてしまったのである。コール市場で取引される資金は、多くが無担保であり、翌日決済されるものだ。つまり、金融機関にとっては現金と同じものなのである。その資金に債務不履行が生じたインパクトは巨大であり、三洋証券の破たんの日を境にして、コール市場は事実上機能不全に陥ってしまったのである。 こうなると、金融機関は、たとえ十二分な優良資産を保有していても、日々の決済資金の調達に不自由を感ずるこ