なにより面白く、気宇壮大な丸谷才一の文学世界。たのしく工夫のある小説。通説に果敢に挑んで説得力のある評論。丸谷はどのように作品をつくりだしていったのだろう。小説家、批評家、翻訳者としての仕事を通じて精緻に追う。『須賀敦子を読む』で読売文学賞を受賞した、定評ある文芸評論家による、はじめての本格的評論。ジョイス研究と翻訳を通じて発見したモダニズムと13世紀初めの天皇歌人の後鳥羽院は、丸谷才一の文学精神のどこで響き合ったのか。出発点となった『笹まくら』『たった一人の反乱』から『女ざかり』『持ち重りする薔薇の花』をへて、『輝く日の宮』では何が達成されたのか。小説の仕掛けと多層性を読みほどき、面白い小説の由来に辿り着く。小説と評論の二つの領域を往還しながら、作家の全体像にせまる力作評論。 (目次から) 第一章 『笹まくら』からの出発 第二章 反乱・カーニヴァル・国家 第三章 モダニズム文学の花火 第