必死で「殺していません」と無実を訴える西山美香さん(38)に、ほとんど耳を貸さない裁判官。呼吸器事件の裁判記録を読むと、そんな法廷の様子が浮かび上がる。 「本当に有罪だったら、そんな(無実を訴え続ける)面倒くさいことはしないと考えるのが常識でしょう。そこまで執念を燃やしてやっているということは、やっぱり本当にやっていないのではないかな、とまず考えます。本人がそこまで言っている以上、徹底的に調べてやらなくてはいけないと思います。他の裁判官は、あまりそういうふうには考えないのですね」 裁判官時代に三十件もの無罪判決をすべて確定させた元東京高裁判事で弁護士の木谷明さん(80)は著書「『無罪』を見抜く」で、獄中から再審を求め続けた被告について、そう書いている。冤罪(えんざい)を見過ごす原因は、裁判官個人によるものか。思い当たることがある。ある弁護士が、司法修習生時代に指導役の裁判官が法廷の舞台裏で