鳴り響く落雷の音を始め、みな一様に竜の巨体へ向かって走り出す。竜の試練。腕のたつものは心を昂らせ、闘志を燃やす。崩れる岩、巻き起こる熱風の中で、ガーナは一人膝をつき踏み込めずにいた。 「傷が疼く…こんな時にか…」 横一線に裂かれた腹の古傷は、過去にドレスタニアを脅かした妖怪を封印したときについたものである。《あの妖怪》の持つ「牙」には決して癒えることのない呪いが込められており、ガーナは普段より寝たきりの生活を強いられている。その上でなお、ドレスタニアの中では最も強い戦力なのだ。そのプライドの高さから、国民にガーナの傷を知るものは少ない。故に国民はガーナに期待をよせていた。 「大丈夫ですかい、王の旦那。失礼だがあんた、その傷じゃ足手まといだ」 名も知らぬ密入国者の老人が、ガーナに背を向けたまま語りかける。冷酷な一言は、紛れもない事実なのだ。ガーナ自身、それは良く理解している。だが、王として退