台風19号が各地に被害をもたらした10月。 ネット上で「よくやった」と、あるダムを称賛する声が相次いだ。 その名は「八ッ場ダム」。 かつて「コンクリートから人へ」のスローガンのもと、時代にあわない大型公共事業の象徴として、一時、本体工事の中止が宣言された、いわば「いわく付き」のダムだ。 果たして八ッ場ダムは、人を守ったのか。そして、災害が激甚化、広域化する中、公共事業やインフラ投資はどうあるべきか。取材した。 (徳橋達也) ダムの効果はあったのか まず、八ッ場ダムによる洪水抑止の効果について、国土交通省の担当者に聞いた。 台風19号が関東地方を襲った当時、完成間近の八ッ場ダムでは、本格的な運用を前に、実際に水をためて安全性を確認するための「試験湛水」が行われていた。 ダムから近い長野原観測所では、10月11日から13日にかけて累積347㎜の大雨を観測。この雨で、八ッ場ダムの水位は54m上昇