何年か前に公開された映画『KIDS』は、伝説の写真家ラリー・クラークの監督作ということで話題になったが、筆者はどうもこの映画が好きになれなかった。キッズの存在を通して”いま”を描きながら、その肝心な部分が曖昧にされているように思えたからだ。 この映画には、セックスやドラッグとともにAIDSという要素が盛り込まれているにもかかわらず、映画はそのAIDSという現実に対する主人公たちの反応や姿勢を明確に映しださないままに終わってしまい、それを描かないことで何とも曖昧な余韻をかもしだすのだ。 これは奇しくも同時期に公開された北野武の『キッズ・リターン』の展開とは見事に対照的である。こちらは全体的に見れば、いまとは程遠いノスタルジックな設定に基づいているにもかかわらず、 ふたりの主人公たちが限りなく死に近い挫折を潜り抜けるというただ一点だけでしっかりと現在に切り込んでくるのだ。 それを思うと、肝心の