人口約13億人のうち約5億人がトイレのない家に暮らし、茂みや道端で用を足すインド。背景にあるのが国民の約8割が信仰するヒンドゥー教の思想だ。政府はトイレ普及に本腰を入れ始め、メーカーも巨大市場で商機を追うが、政府が掲げる「きれいなインド」への道のりは険しい。(バラナシ=奈良部健) ガンジス川のほとりにあるヒンドゥー教の聖地バラナシ郊外の村。主婦ムンニさん(45)は夜明け前、れんがを積み上げただけの家から20分ほど歩いて川辺まで行くのが日課だ。茂みに隠れて用を足す。家にトイレはない。 「夜中に外に出て、不審者に襲われた友人がいる。サソリや蛇も怖い」 夜中でも息子のマンガル君(6)が用を足すのに付き添わなければならない。国内では子どもが連れ去られ、行方不明になる事件も相次ぐ。頻繁に行くことがないように食事の量を減らしているという。 国連児童基金(ユニセフ)の調査によると、インドでは2015年、