1975年に書かれた、中村桂子による生命科学マニフェスト。 現在の中村は生命誌という言い方をするが、基本的な考え方はおそらく変わっていないのだと思われる。 マニフェストと述べたが、まさにこれは宣言書といった雰囲気が強い。 従来の生物学ではなく、人間や生きものの生命ないし生きているということはどういうことかという問いを中心に据えた学として、生命科学をこれから立ち上げていく、という意思表明である。 それ自体は面白い試みであるが、まだ意思表明の段階なので、「生命科学は環境問題について考えていなければならない」とか「人文・社会科学との連携が必要となる」といった、もっともな主張ではあるけれど、一体具体的にどうなっていくのか分からないなあという部分は結構ある。 ただし、そういうことを差し引けば、生物学全体の見取り図を得るのに有用な本である。 もちろん75年に書かれた本なので多少古びている記述はあるが、