歴史研究と社会学の合流点にある研究は,1つの事例を詳細に分析しながら,いかにして一般化可能な理論を構築することができるのだろうか.本稿は,理論志向のエスノグラフィーの方法論に着想を得て,歴史社会学者が外的妥当性を備えた理論を構築するための1つの枠組みを提案するものである. 近年のエスノグラファーは,その解釈的・記述的な性格を保ちつつ,因果関係の説明や限定的に一般化できる理論の構築を試みてきた.こうした理論志向のエスノグラファーによる「構成的主張」(Pacewicz 2020)は,ある現象や特性が「どのように(how)」存在するようになったかを詳細に記述することで,それらが「なぜ(why)」生じたかについての理論的説明に貢献することをめざすものである. 本稿は,歴史分析のために構成的主張を改良し,歴史社会学者が単一事例研究から外的妥当性のある理論を作り出すための1つの方法を提案する.歴史社会