スーフィズムはイスラム教の神秘主義一派で、ムスリム世界では少数派だ。スーフィーは信仰生活の秘密めいた様相に重きをおき、神との直接的で個人的な体験を追求する。 カザフスタンにイスラム教が到来したとき、スーフィズムは土着の遊牧民文化にあったアニミズムやシャーマンの伝統と結びついた。伝統的な治療師や占い師である〈バクシー〉は、スーフィズムに改宗したが生業は続けた。彼らはスーフィーの修道僧となり、極貧生活と苦行に耐え、禁欲を通じて他者に神への道を示した。 ビファティマ・デゥアレトワ(Bifatima Dualetova)は、カザフスタン最後のスーフィー修道僧のひとりとされる。わたしが初めて彼女に会ったのは、中央アジアを旅していた2010年9月だった。アルマトイに滞在していたとき、ウズベキスタンとの国境付近のウングルタスという小集落の外れに、女シャーマンが暮らしていると、泊めてくれた現地の人たちから