社会福祉の学問の確立に向けたこうした努力に対し、いち早く否定的な声をあげたのは福祉の実践家たちの一部であった。現場にいる実践家たちはいう。学問は日常の業務には関係ない。実践において役立つことは少ない。大学での専門教育を終え、資格を手にした若者よりも、現場経験の長い無資格者のほうが現場では有能である、など。そこでは、ソーシャルワーカーの専門性を裏付けるはずの研究の蓄積は、容赦なく放棄される。 「学問は日常の業務には関係ない。実践において役立つことは少ない」というのは学問の質の問題だと思う。社会福祉学の一部だと思うのだが、確かに現場で役に立たない学問領域は多いような気がする。「****という社会福祉の理論を最初に開発したのは誰で、****年だった」とかいう類の学問は現場ではまったくといっていいほど役に立たないのは間違いないが、この本でたびたび紹介される「反省的学問理論」に含まれる当事者の権利や