ランチで隣の席についた客は、食事中絶えず何かの文句を言っていた。 先日紹介を受けた保険には騙された、 近くにあるあの店は高い、あそこは良くない食材を使っている、 上司は使えない、同僚の誰それは直さなくてはならない欠点がある。 50歳近くと思われる彼は、奥さんと思しき正面に座った女性に対して 「もう本当に色々とダメなんだよ」、と、終始愚痴をこぼしていた。 何かをつくる立場を一度経験すると、 それについて軽率に悪く言う事はできなくなる。 自ら本格的に製造してみようとすることについて、 「自分にはこれは無理なんだ」 ということを思い知りたくてそのようにしているのだ、 と話していたことがあった。 野菜でも一年も作り続けていると 細やかな土の味の違いがわかるようになり、 ビールやワインも自らゼロからつくってみると、 お店で出るたった一杯の生ビールがいかに 感動的な作品なのかを思い知ることができるとい