「なぜ、お客が望む通りに見積もりができないのか。顧客ファーストだろう?」とドヤ顔で言い放つマネージャーがいた。自社開発のソフトウェアを組み込む提案をしたときの話だ。 確かに顧客ファーストは重要だが、お客の要望をそのまま実現しようとすると、ソフト改修に設計思想レベルでインパクトがあり、コストも時間も莫大なものになる。見積もるだけでも大変だし、べらぼうな額になるのは必至なので、こう返答した。 「お客のいう通りに見積もるのが仕事じゃないです。お客が目指すビジネスにどう貢献できるかを提案するのが仕事です。見積もりはその一部に過ぎません」 愚かな思いつきばかり口走るマネージャーだが、バカではない。リジェクトされるのが分かっている非現実的なコストを見積もる作業はナンセンスであることを懇々と言って聞かせると、ようやく納得してもらえた。彼の言い分では、経営会議での参考になるからというが、選ばれない方に注ぐ