著: ごはんとアパート 郵便局へ手紙を出しに行くために、いつもの道を歩く。通りに立ち並ぶのは、ドラッグストア、歯科医院、ホームセンター、保育園、クリーニング店……。なんてことはない、ありふれた町の風景だ。 けれども、そのどれもが人々の暮らしを支えてくれるものだし、言わずもがな、この町の風景はここにしかない。 時々伺う、ご夫婦で営まれている美容室の軒先では、春になるとミモザの花が咲く。香ばしいかおりが漂ってくるうなぎ屋さんには、いつも行列ができている。それから、すぐそこにはいつでも、大きくゆったりとした湖が広がっている。 自然と暮らしが互いに寄り添う、水辺の町 私は滋賀県の大津市で生まれ育った。そして、琵琶湖の南端にある「瀬田川」が流れる町に住んでいる。 日本最大の湖である琵琶湖には、100以上の河川が流れ込んでいるのだけれど、「瀬田川」は唯一の出口となる川。この川は宇治川・淀川と名前を変え