先日報告した村上春樹『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の翻訳だが、ドイツ語訳とフランス語訳も見てきた。問題の箇所はいずれもそのまま訳されていた。ドイツで春樹批判が出たのはそのせいかもしれない。その際、「英訳からの重訳が多いから誤解が」云々と言っていた者もいたが、そうでないことが分かった。まあフランス人は、あの程度では何とも思わないだろう。 −−−−−−−−−−−−− さて、荻原浩原作の「明日の記憶」という映画をDVDで観たのだが、いやはや、とんだブルジョワ人情話であった。 格差の拡大が憂慮され、結婚できない男女が問題化している21世紀はじめ、渡辺謙の主人公は豪邸に住み、恋愛結婚した美しい専業主婦の妻(樋口可南子)と、早々と結婚相手を見つける一人娘に恵まれた、49歳で渋谷にある大手広告会社の部長である。これがアルツハイマーとなる話。妻は自ら陶器販売の小洒落た仕事に就いて、献身的に