ある程度、長いあいだ本を読んできた人ならば、一度や二度、蔵書の整理について思い悩んだことがあるはずだ。放置すれば本はどんどん増え、居住空間を圧迫する。床が抜ける心配をするほどではなくとも、このまま放置してはおけない、という局面に至るのは時間の問題である。なぜなら、日本人は滅多に本を捨てないからだ。 そのかわりに本を「売る」人が増えた。 日本の出版業界は1990年代半ばまで右肩上がりで成長しつづけた。その原動力は主に雑誌だったが、文庫や新書といった、いわば英米のペーパーバックに相当する廉価本も読者の裾野を大いに広げた。20世紀後半は大量生産・大量消費の時代であり、出版をマスマーケットに向けたビジネスに変えたといっていい。 また日本の文庫や新書、並装の書籍等は欧米のペーパーバックとくらべて印刷・造本・用紙等の品質が高く、一度や二度読んだ程度では、ほぼ新品と同様である。こうして良質な過去の出版物