阿呆を言うな。フォアグラが、陸のカワハギの肝なのだ。 話の肝、などというように、本質は肝にある。旨味もまたしかり。肝といったらフォアグラだろう、いや鮟鱇ではなかろうかなぞ思索された諸賢もおられると思うが、否。カワハギである。西ではこれをハゲという。皮が剥げやすいためこう呼ばれたそうだ。調理の工程を名称にするとはなんとも食い意地の張ったものであるが、それだけ美味いのだからあまり馬鹿にもできない。現に私も、カワハギの鼻先を切り落とすやニコニコペリペリと皮を剥ぐ一人である。 カワハギの醍醐味はまず釣るところから始まる。洋鴨を飼育している、地引漁に出て鮟鱇をとってくるという御仁はまあおるまいが、肝の美味いカワハギは秋口にはどんどん釣れる。その釣り味はほかのどの魚よりも深淵である。カワハギを釣るものにのみ与えられる「カワハギ師」という呼称の由来もその深みにこそある。 いつであったか、後輩と釣りに出か