小説、評論、エッセー、翻訳と多彩なジャンルで縦横無尽に活躍した作家、丸谷才一さんが13日、死去した。その仕事には、古今東西の文学についての広くて深い教養を背景に、日本の近代文学にはそれまでなかった知的でユーモアにあふれた作風が一貫していた。 丸谷さんが嫌ったのは、やたらに暗くて深刻ぶる態度、じめじめと湿った感情的な文章、偏狭なまじめさやえん世的な世界観だった。いたずらにイデオロギッシュな態度やファナティック(熱狂的)な主張も遠ざけていた。逆に、知的な市民生活や明るい笑い、健全な楽しみや品のいい態度を好んだ。そして何よりも大切にしたのは「考える」という姿勢だった。 2003年に10年ぶりの長編小説「輝く日の宮」が刊行された時のインタビューで、ヒロインの杉安佐子について尋ねたことがある。柔軟な発想に恵まれた国文学者で、度胸とちゃめっ気のある女主人公だった。丸谷さんは「僕の好きな女性像を書いたと