毎日のように“東京電力”という言葉が飛び交う中で、ふと本書が頭に浮かんだ。 もう14年も前の事件だが、当時、“東電”というアングルでは事件を見てはいなかった。 というわけで、改めて連休中に本書を再読してみた感想を。 事件について簡単に触れておくと、昼間は東京電力の課長というエリート、 夜は渋谷の街角に立つ女という2つの顔を持つ女性が、安アパートの空き部屋で惨殺され 放置されていたという事件である。 「なんでそんなエリートキャリアウーマンが、夜の顔なんてもってるんだ」 というのが、当時の人の率直な疑問だったと思う。同じ疑問を抱いた著者が、被害者の 心の闇に迫るため、夜の渋谷からネパールの山奥まで駆け回って書き上げたのが本書だ。 あらためて事件の経緯には触れないが、今読んでみると、この事件にはいくつかの コントラストがあるように思う。 東電と、渋谷の夜の世界 父親と、被害者本人 日本とネパール