東北にときどきぶらりと訪ねて行く小さな港町がある。その町には何人かの友だちが住んでいて、うまく時間が合えば一緒に食事をしに行くこともあるし、夜遅くまでバカ話をすることもある。誰の都合もつかなければ1人で町の様子をなんとなく眺めてから、お決まりの土産物を買って帰ることになる。そんなふうにして僕はその町を訪ねている。 そこに今月いっぱいでひとつの役割を終えようとしているラジオ局がある。5年前、町の人たちが中心となって、震災からわずか41日後に開局した臨時災害FM局だ。どうしても伝えたいことがあるのだという強い思いから、地元の人たちがたどたどしく始めた放送も、気づけばもう5年近く続いていることになる。何かを大げさに語るのではなく、理想論を振りかざすのでもなく、ただ町と一緒に歩もうとした小さなラジオ局は、色も音も失いかけていた町に若者たちの明るい声を届けてきた。 いよいよ放送が終わると聞いた多くの