誤用日本語「至上命題」 小谷野 敦 私はことさら、若者の言葉遣いが乱れている、とは思わない。確かに、目の前で使われると感覚的に不快になる場合はあるけれど、冷静に考えるなら、言葉は生成変化するものであり、かつて「しだらがない」だったものもいつしか「だらしがない」になったように、可能と受動を区別するために「ら抜き」言葉が生まれるというのは自然な変化のうちだと言うほかないのである。「告白する」が「コクる」になり、「気持ち悪い」が「キモい」になるのも、むしろ興味深い現象であり、それが言語感覚の柔軟な若者から生まれるというのも、自然なことだ。ただし、セックスを「エッチ」と言ったりするのは、この「エッチ」なる言葉がもともと「変態」の頭文字を取ったものであることを思うと、意味分かって言ってるのか、と言いたくはなる。さらにこの種の語彙レヴェルでの若者言葉を、四十過ぎの大人があたかも若者に媚びるかのように使