前回までのあらすじ 「秘境は僕らのすぐそばにある」というメーテルリンク発言によって組織内での立場を危うくしたおれは、さらに某乳酸菌系発酵食品さんの策略によりメンヘルの烙印を押されてしまう。後日、探検隊本部組織がおれに寄越したのは「北関東支部異動」という事実上の解雇通知だった。もう生きて都会に戻ることはできまい。腹を括ったおれは一人だけのサマーウォーズを仕掛けることにした。しかしここは旧家ではなく、頼りになる親戚筋も可愛い先輩もいない。 「お前だけがともだち」 ガレージのシャッターを上げると、そこには旧型の日産マーチがある。ETCもナビも付いていない1000ccのパステルカラー。ぼくは世界で二番目に上手にこいつを動かすことができる(一番目は母親だ)。 地図帳でルートを確認し、ページ端を折り曲げる。高速料金も確認。 「さて、じゃあ」キーに付いたボタンを押す。「あい」ガチョという音とともにピカピ