はじめにP. S チャーチランドという哲学者が書いた『脳がつくる倫理』という本は、執筆者にとってかなりの衝撃でした。 この本は脳の認知研究で倫理の基盤を見ていこうという本で、それまで読んできた倫理学の本が「カントは~」などの引用と長い論述に支えられていたのとは全く違います。 例を挙げると、「道徳的」とされるものは、それを守るとオキシトシンが分泌されるようなもの、と語られ根拠として実験データが説明されます。 社会的行動はオキシトシンといったホルモンの、つまり私たちの生物学的あり方に基づくというところから倫理を考えるというものです。 科学は決して芸術や人文学に取って代わろうとしているわけではない。とはいえ物事の本性に関する哲学的な主張、たとえば道徳的直観のようなものは脆弱であり、科学と哲学、つまり証拠が思弁に勝つべきなのである。 P.S チャーチランド『脳がつくる倫理』序より要は「哲学者なる昔