ブックマーク / www.aozora.gr.jp (1)

  • 大手拓次 藍色の蟇

    藍色の蟇 森の宝庫の寝間(ねま)に 藍色の蟇は黄色い息をはいて 陰湿の暗い暖炉のなかにひとつの絵模様をかく。 太陽の隠し子のやうにひよわの少年は 美しい葡萄のやうな眼をもつて、 行くよ、行くよ、いさましげに、 空想の猟人(かりうど)はやはらかいカンガルウの編(あみぐつ)に。 陶器の鴉 陶器製のあをい鴉(からす)、 なめらかな母韻をつつんでおそひくるあをがらす、 うまれたままの暖かさでお前はよろよろする。 嘴(くちばし)の大きい、眼のおほきい、わるだくみのありさうな青鴉(あをがらす)、 この日和のしづかさをべろ。 しなびた船 海がある、 お前の手のひらの海がある。 苺(いちご)の実の汁を吸ひながら、 わたしはよろける。 わたしはお前の手のなかへ捲きこまれる。 逼塞(ひつそく)した息はお腹(なか)の上へ墓標(はかじるし)をたてようとする。 灰色の謀叛よ、お前の魂を火皿(ほざら)の心(しん)

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