6474軒が消えた 筆者の谷口功一さん(谷口さん提供)【時事通信社】 「夜熟睡しない人間は多かれ少なかれ罪を犯している。彼らはなにをするのか。夜を現存させているのだ」と言ったのはフランスの或(あ)る思想家だが、この文学的な一節はコロナ下では、これまでとは全く違った印象を残すものとなってしまった。言うまでもなく、われわれは未(いま)だ夜も更けきらぬ20時以降、家の外で他人と食卓の歓談を楽しむことも許されなくなったのである。 6474軒―これが何の数字だか分かるだろうか。実は昨年4月19日から今年2月末までに廃業したスナックの数なのだ。2020年のコロナ禍の拡大以降、夜の街は冒頭に記した通り「罪深い」ものとして糾弾され続け、息も絶え絶えになっているわけだが、今日はその中でも、日本中のどんな小さな街にも存在するスナックについての話をしたい。なお、ここでいうスナックとは、おおむねカウンターのある小