南彰著 『絶望からの新聞論』 朝日新聞を辞めた記者が朝日批判の本を出すというのは伝統芸のようなものとなっている。理由は簡単で、需要があるからだ。 右から見れば朝日は「アカヒ」であり、右派論壇ではどんなにお粗末で支離滅裂な内容でも朝日叩きというだけで歓迎される。左からすれば朝日のどこが左翼なのだ、あんなものは体制べったりの権威主義に他ならないではないかとなる。SNSで毎日新聞に、読売新聞にこんなひどい記事があると投稿しても大して注目を浴びることはないが、朝日がやらかしたとなると左右双方が食いつくために大いにバズることになる。 では「元朝日新聞のエース記者」による本書もそのようなものなのだろうか。巻末の青木理との対談で、南は退社にあたって社長や記者に宛てて送った一斉メールが『週刊文春』などでセンセーショナルに取り上げられたのが不本意であったとしている。朝日叩きで一稼ぎしようとするならむしろこれ