名古屋市中川区でパン店を営む佐藤奈美さん(53)は再び悩んでいた。降って湧いたような突然の総選挙。今回は認知症を患う母の克江さん(77)を期日前投票に連れ出すべきかどうか。選挙は欠かさず行っていた母だった。 四月の名古屋市長選で悩んでいた様子は、五月十八日の本紙で報じた。その時は投票できたが、今回はどうだろうか。この間、五カ月。克江さんの症状は確実に進み、要介護度は2から4に上がった。昨日言えていた人や物の名前が出てこなくなっている。何かができなくなっていることに気付く毎日だ。 悩む理由は、投票所での代筆投票などのサポートが選管職員に限られていると法律で定められているからだ。以前は家族やヘルパーが付き添えた。だが、二〇一三年五月の公職選挙法改正で、成年被後見人の選挙権を回復させる際、悪用されることを防ぐためとして「代筆などを担う者は選管職員に限る」と改められたのだった。