飯野賢治の葬儀には沢山の人が集まっていた。久しぶりに懐かしい仲間たちとも再会することが出来たが、会釈の後、どうしても二の句が継げない。 突然の事にみんな言葉を失っていた。 いまぼくは飯野賢治とのはじめての会話を思い出そうとしている。 それは1996年頃だっただろう。 『Dの食卓』が評判になり、メディアへの露出がはじまったころだったので風貌は知っていた。 ぼくも『アクアノートの休日』が話題になって、それなりに顔や名前が知られはじめたころだった。 なんらかのイベントですれ違った時、ふーん、あいつか、と思った。幕張メッセだったと思う。 トレードマークのスーツ姿、ロン毛の巨漢。険しい表情で、ズンズンズンと歩いていた。彼もぼくに気づいたのだろう、一瞬だけ視線がばっちり合った。 その日はそれでおしまい。ぼくは一緒にゲームを作っていたメンバーに「飯野賢治を見たよ」と伝えた。 ぼくらはまだ20代だった。世