仕事で嘘をつくから、ちょっとつきあってくれないかな。そう言われて休日に中古車を見にいった。彼は中古車屋の店主と話し、乗用車についてあれこれ訊いて、にこやかにそこを出た。 覆面でさまざまな商品の調査をするのが、彼の仕事だ。中古車のあとはハイブリッド車と軽自動車をみて、それから海外の車がぴかぴか光っているショールームを訪れた。 これでおしまい、と彼は言った。私はため息をついて、見てるだけで疲れちゃったよ、と訴えた。だって、嘘ばっかり平気でしゃべってさあ。 彼はいかにも愉快そうに、そういう仕事だからね、と言った。嘘つきを見るだけではらはらするというのはいいことだよ。善良でとてもいい。 私は後学のために、嘘にはなにかコツがあるの、と訊いた。彼は気前よく解説してくれた。 他人は僕の言うことが真実かどうかなんて、そんなに気にしていない。嘘だとわかったところで、車を売っている人たちは腹を立てたりはしない