71 右手に吹いた風が 左手に届く 200CCの献血 等級の低い列車で ここまで来た 会議が始まる 72 プラスチックの空 消し忘れた電線の跡 眠るだけ眠ると 羊たちは巣に帰って行く 色彩豊かな 廃車に乗って 73 寝不足の犬が長い坂道を下る 開け放たれた窓から 今日の天気予報が流れてくる 停留所にバスがとまり 浮き輪を身に着けた人が 次々と降りてくる 遥か彼方の海を目指して ここからは皆 歩いて進まなければならない 74 水平線の匂いがする 黒板消しは今日もどこかで 私の背中を 消しているにちがいない 百葉箱を開ける 台風が音を立てている 75 送電線の中で キャッチボールをする 刻々と夕闇は深まり 私たちはいくつもの ボールを失ったのだった 何事にも負けない、 そう決めた時から アジのひらきが好物となり ホッケもたくさん食べた 76 虹の真下で受話器を取った 誰かの息継ぎだけが聞こえる