東京都西南部にある八王子と神奈川県の横浜を結ぶ街道の一つに、かつて幕末から明治にかけて賑わった「浜街道」がある。浜街道は、日本が長い鎖国の時代を終わらせ、開国に踏み切った1859年、外国貿易のために新たに開港した横浜港へ向けて、多くの多摩地方の商人たちが人馬を行き交わせて賑わった。中でも活躍が著しかったのが、八王子鑓水地方の商人たち。彼らによって絹の材料である生糸が盛んに横浜へと運ばれたことから、浜街道はのちに「絹の道」と称され、現在でもその街道の一部が往時の面影を留めたまま残されている。今回ご紹介するのは、その鑓水地方にひっそりと残る古き街道跡。1996年文化庁「歴史の道百選」に選ばれた美しくも儚い歴史を持つ日本のシルクロードに、かつてそこで栄華を極めた先人たちを思いながら、木漏れ日の下をゆっくりと歩いてみよう。