ここ数年、翻訳の仕事がきわめて充実している村上春樹ですが、今回はトルーマン・カポーティの「ティファニーで朝食を」を新訳しました。ファッショナブルな装丁もあいまって実にたのしく読めた。やっぱりとてもいい小説。すばらしい。翻訳はあるていどの時間を経た場合、細部のアップデートが必要になりますが、米文学ファンにとっては、その最良のエッセンスをあたらしい言葉で読みなおす、とてもいい機会になるとおもう。わたしも、大学生のときいらい、十数年ぶりに再読しました。よかったです! とてもうつくしいテキストだった。 この新潮文庫版の表紙がそうであるように、この小説にはどうしてもオードリー・ヘップバーンのイメージがある。ジバンシーの黒いドレスを着たヘップバーンが、ティファニー宝石店のショーウィンドウの前に立っている姿。村上は今回の装丁について、「ヘップバーンの写真は使わないでほしい」と依頼したそうだ。それは、読者