部屋に置かれているのがソファか、座椅子かでその部屋に住む人がお金持ちか貧乏かが決まると考えていたことがあったと思うし、いまでもその考えはかすかに残っている。いま住んでいる部屋にソファはなく、座椅子がふたつあるが、だからといって貧乏だと言いたいわけでもない。ただ、今でも残っているソファと座椅子に対する考えを、いつ、はじめて持ったのかが気になった。しかしそのはじめて考えた瞬間のことは思い出せない。 小学生の頃、何年生の頃だったかは思い出せないが、よく遊びに行っていた空き地があった。そこは古い民家の門のような塀と扉だけが書き割りのようにたっていて、その扉の向こう側にはなにもない、舗装されていない土の地面がむき出しの、何坪だったかは思い出せないしそもそも何坪かを気にしたこともなかった広場で、たまにゲートボール大会が開かれていたが、普段はほとんど誰も来ない場所だった。放課後、当時気に入っていたウェス