2002年度一橋大学社会学部学士論文(加藤哲郎ゼミナール) 闘技的民主主義の思想と展開 ──「アゴーンのデモクラシー」を中心にして── 鵜飼 健史 序文 「雑多な事象のうちに概観を求めるのか、具体的な方向づけを求めるかは、まったく別のあるものだから。具体的な方向づけを求める意志は、ただ具体的な生の状況に照らしてものごとを見る。図式的概観は、そのときどきに利用可能な人為的に設定された秩序のために、生きた連関を引き裂く。」[1] イデオロギー論を虚偽意識から解放し、社会変革の思想的武器としてのイデオロギー概念の契機となったという意味で意義のある古典『イデオロギーとユートピア』において、K・マンハイムは以上の見解を示した。彼によれば、「図式的に秩序づけようとする態度」は科学者の傾向