「エチオピアはここ60年で最悪の飢饉にいま見舞われている」と英BBC放送は報じるが、エチオピアでは実際、飢饉がそんなに問題視されていない雰囲気がある。南部では確かに飢饉による餓死者が出ている。ところが、私が暮らす北部のバハルダールや中部では、飢饉が発生していることを知る人さえ少ないというのが現実だ。エチオピア政府も「80年代の飢饉と比べると深刻さは低い」と発表している。 今回の飢饉は、町の市場で食料を購入できるくらいの収入がある中間層にとっては影響はほぼゼロだ。自給自足に近い生活を営み、十分な現金収入を持たない農家の貧困層のみが、天候の影響を受け、自分たちの畑から作物を収穫できなかったために、食料不足に苦しんでいる。 今回の飢饉の背景にあるのは、気候変動とインフレだ。エチオピアには雨期と乾期があり、長い乾期の間にも1週間ほど「豪雨が降る時期」がある。ところが今年はこの時期の降雨量が少なかっ