「ボス!」。フィリピンではレストランのウエイターをこう呼ぶ。ウエイトレスだったら「ミス!」。ボスといっても決して自分の上司ではなく、またミスといっても独身かどうかを確認する必要はない。単なる呼びかけの言葉だ。 タクシーのドライバーやコンドミニアムの守衛に話しかけたいときも「ボス」と発すれば、にこやかにこっちを向いてくれる。レストランで「ミス」と合図をしたら、ちょっと年増の女性がパッと振り返って、ニコッとスマイルを送ってくることも。そこはご愛嬌。 これはフィリピン英語の一部だ。アメリカにかつて植民地支配されたこの国では、「国語」こそフィリピン語(ピリピノ語。タガログ語とほぼ同じと考えていい)だが、いまも英語は「公用語」。学校でも英語を使って授業することが少なくないため、へき地を除けば英語はそれなりに通じる。アジア最大の“英語圏”といわれるゆえんだ。 フィリピン人の英語はくせがある。あの“カタ