頭の上にモノをのせて、あぜ道を練り歩く女たち――。東南アジアの田舎に足を運ぶと、こんな牧歌的な光景にときおり出くわす。それを目にした旅人は、なんとなくホッと息をつき、にんまりし、そして心の中に幸せが広がっていく。アジアで生まれ育った者同士の不思議なきずなを感じる一瞬といえるかもしれない。 だが当の本人たちは、異国の旅人を癒そうと気づかって、頭の上でモノを運ぶパフォーマンスを見せているわけではない。あくまで日常。彼女らの流儀。頭の上にのせたいから、のせているだけなのだ。 ではどうして、手や肩を使わず、わざわざ頭の上にモノをのせて運ぶのか。“神々の島”と比ゆされるインドネシア・バリを例に考察してみよう。 バリ人の頭のてっぺんは平らなのか? そんなことはない。細長い顔の人もいる。頭とモノの間に布をはさんで、バランスをとって運ぶこともある。 器用なのか? そうかもしれないが、それとは直接関係ない