空振りの光景まで絵になる小笠原なら……ひと振りに懸ける代打の役割でも十分ファンの大声援を呼べるはずだ。 ものすごい大歓声だった。 5月18日の東京ドームで開催された巨人-西武戦。4回二死満塁の場面で「代打・小笠原」がコールされたときのことだ。 今季初めて打席に立った小笠原は空振り三振に倒れたが、一瞬、確かに球場の空気を変えた。 この存在感――。 広島の「生ける伝説」、前田智徳を彷彿とさせる。 前田もそうだ。ネクストバッターズサークルに前田が佇んでいるだけでファンはそわそわし始め、「代打・前田」のコールでまずはひとしきり喜び合う。打つ打たないは二の次なのだ。 見られるだけでいい。感じられるだけでいい。いや、極端な話、見られなくても見られることを期待できるだけでもいい。そうしてファンは球場へ足を運ぶ。そんな選手が今、他にいるだろうか。 しかし小笠原ならば、前田になれるのではないかと思った。 完
彼が投げれば、130kmそこそこのボールが魔球に変わる。 いつだって飄々とアウトの山を築く球界随一の技巧派が、 並み居る強打者を幻惑する投球術の秘密を語った。 食後に飲む、熱いお茶が好きだ。 確かに、普段着の彼にはそんな姿がピンと来る。どんなに熱くても平気な顔をして、のどかにお茶をすすっていそうだ。 「でも、熱すぎるのは嫌です(笑)」 こうだと決めてかかると、肩すかしを食らう。つかみどころがなく、いつでも落ち着き払っている。ライオンズの石井貴ピッチングコーチは、彼を評してこう言った。 「まるで、投げる前に打たれることを察知してるみたいだね。打たれそうだと思うと、スッと抜いたり、わざと外したり……ホント、あの人だけはわからない(笑)」 お茶どころ、静岡県出身の牧田和久。プロ3年目、28歳のアンダースローは、WBCでクローザーの大役を託された。紅白戦から壮行試合、強化試合、本戦を通じて1点も失
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