あの忌まわしき事故から1年半。人々の話題から原発が消えかけている。 いや、考えないよう封印しているだけかもしれない。たしかに「原子炉の様子はかなり落ち着いてきた」。しかし「現場ではまだまだ綱渡り的な応急処置を続けている」だけで「収束の見込みはない」。 不勉強は不安を助長する――反原発感情や放射線恐怖は、いわば「文化」だ。だから正しいとか間違っているといったレベルの問題だけでは解決しない。思考バイアスや群集癖も含めてどう対処するか、そう、メタ対策が必須だ。 そこで薦めたいのが本書である。この類の本は多く読んできたが、1年半たった今だからこそようやく出た「本命」といってよいだろう。 ただし、娯楽性はゼロ。媚(こび)も色気も売らない。唯一、わかりやすさだけには徹底的にこだわる。「中学生以上のすべての人へ」という帯文句に偽りはない。放射能について全く知らなくても読み切れるよう徹底されている。 原子