又吉直樹さんの『火花』の発行部数が209万部に達したという。電車の広告ではいまだに「120万部突破」と書かれている。広告を差し替えるのが追いつかないほどの勢いで増刷がかかっているのだ。7月半ばの芥川賞受賞発表までは60万部強だったから、半月で100万部以上の増刷がかかったわけだ。 いま出版界は深刻な不況で、特に文学とノンフィクションのジャンルは本が売れないから、業界がこぞって『火花』ヒットさせようとしたのはよくわかる。特に芥川賞はこのところ、受賞が話題になることが多いから、今回も関係者はいろいろ考えたのだろう。その結果、予想をはるかに上回るベストセラーが誕生したわけだ。業界の多くの人がほっとしたし、これが起爆剤になって少しでも出版界が活性化すれば、と思ったことだろう。 でも、どうなんだろう。そのブームはいまや独り歩きしてしまっているし、こういう現象って本当に出版界にとって良いことなのだろう
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