大きな嵐だった。 山の天候は変わりやすいと言うが、しかしこれはあんまりだ。 「夕方には天候が悪化する。早く帰りなさい」 私は、育ての親の言葉を今更思い出し、ひどく後悔した。 ここは険しい山の中である。 国を東西に走るウーゴ ハック山脈の中央付近、エイアズ ハイ川の源流を遥か足元に見降ろす位置だ。 人間中心の都市、エイ マヨーカから落ち延びた私は今、マカ アイマスの地でキスビット人と共に暮らしている。 彼らキスビット人は自然と共に生きており、山の天候にも詳しい。 それは理解していた。 しかし私ももう十七歳オトナである。 自分の身は自分で守ることが出来るし、なにより天気の変わり目はニオイで察知できる。 そんな慢心と過信、油断が今の状況を招いた。 自業自得である。 「こんなに雲の足が速いとは・・・」 天候の変化に気付き、下山しようとしたが間に合わなかった。 辛うじて岩の窪みに避難し、雨に打たれる