抗インフルエンザ薬バロキサビル マルボキシル(商品名ゾフルーザ, 以下バロキサビル)はキャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害剤で, 2018年に日本国内で承認された。国立感染症研究所インフルエンザ・呼吸器系ウイルス研究センターと全国地方衛生研究所は共同で, 2017/18シーズンから国内におけるバロキサビル耐性ウイルスの発生動向を監視している。 2018/19および2019/20シーズンには, バロキサビルに対する感受性が低下したインフルエンザA(H1N1)pdm09およびA(H3N2)ウイルスのヒトからヒトへの感染伝播を検出した1-3)。感染伝播したウイルスは10歳未満の小児から分離され, 臨床試験でバロキサビル投与後の患者から検出されバロキサビル耐性変異として知られるPAタンパク質のE23KまたはI38T変異を有していた。これらのヒト-ヒト感染はいずれも散発例で, これまでバロキサビル耐