「駄目だ駄目だ、今日海なんか行ったら駄目だよ、危なくってしょうがないよ。」 早朝に実家に到着した私と妻と息子は、まだ午前中だというのにギラギラと殺人的な熱と光を放って照りつける太陽の下、私の両親と祖母と共に実家のすぐ側にある先祖の眠る墓に向かい、迎え盆を終えた。 頭から水でもかぶったように汗だくになって家に帰ってきて、墓から提灯に灯してきた蝋燭の火を盆棚に移し、皆で線香を上げて手を合わせる。その後は毎年決まったようにして、祖母の作ったソーメンを皆ですすり、食後にスイカを食べて、その日の儀式が終了する。 昼食を食べ終えてから、私が団扇を扇ぎながら畳で寝転んで青白く光る空をぼ〜っとして眺めていると、息子の春樹が海に行きたいと言い出した。私の実家は太平洋側の海沿いに面した小さな集落にあり、家からものの五分も歩けば、そこには広大な海原が広がっていた。観光客でワラワラと賑わうような白砂の海水浴場とい