2010年01月01日17:02 カテゴリ本科学/文化 正義の理念 正義とか公正という概念は、経済学だけではなく哲学や政治学にとってもつまずきの石である。「格差社会」を指弾する人々は、所得分配は平等であればあるほどいいと思っているのだろうが、働いても働かなくても所得が同じになったら、誰も働かなくなるだろう。他方、所得分配を市場だけで決めて課税も福祉給付もしないと、貧富の差は非常に大きくなる。この両極端が望ましくないことは自明だが、その間のどこに「最適」の分配があるのか、という問題には理論的な答がない。 どういう分配が望ましいかを決めるには、人々の意思を集計する必要があるが、そういう集計は不可能だというのがアロウの一般不可能性定理である。著者は若いころ、アロウの定理を拡張して社会的選択理論の数学的な研究を行ない、のちには祖国インドの飢餓をテーマとして途上国の貧困の問題に取り組み、社会的公正の
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