(1回目、2回目、3回目から読む) 廃校危機にまで陥った工業高校が、同じく苦境を迎えた地元地域の支えを得て、実践的なものづくり教育で再生しつつある。これまで3回にわたり、山形県立長井工業高校のキャリア教育物語を紹介してきた。 筆者が取材の過程でもっとも強く感じたのは、学校づくり、まちづくりに賭ける関係者の静かな熱意だ。率直に言って、長井で行われていることは特に目新しい内容ではない。画期的なカリキュラム、教育方法で飛躍的に生徒の学力が伸びた、といった派手なサクセスストーリーもない。あるのは強い危機感と、それをバネにした長期的で遠大な構想。再生に向かい、それぞれが自分の持ち場で、今できることを地道にやろうとする粘り強さだ。 長井工業高校のキャリア教育の意義、成果が、本当の意味で評価されるのは10年、20年先のことだろう。しかし現段階でも、同校から社会に巣立った若者の証言を得ることで、その教育経