その日、木村きむらは天国にたどり着いた。 といっても、木村は死んだわけではない。観光で天国へやってきたのだった。 * 限定的ではありつつも民間人の宇宙旅行が始まり、世界中を旅し尽くした旅行者が次に訪れるのは宇宙になるだろうと誰もが考えていた。それが月なのか火星なのか、はたまた地球の衛星軌道を1周するだけなのかはともかく、宇宙旅行の時代がやってくると思われていた。 そんな矢先、なんと天国に行く方法が発明されてしまったのだ。 生命が死後がどうなるかについては、人類において永遠の謎とされてきた。一般的には死後は意識がなくなった状態になると思われていたが、輪廻転生するという考え方や、善い行いを続けていれば天国、悪い行いを続けていれば地獄に行く、といった多くの説が唱えられていた。しかし、いずれにせよそれを確かめる術は永遠に訪れない、人々の間ではそう考えられていた。 * その常識を覆したのが、英国の研