ナシーム・ニコラス・タレブを数行で紹介するのは至難の業だ。21年間、トレーダーとして始終リスクと向き合った後、研究者兼エッセイストに転身。哲学や数学における確率論だけでなく、実践の場で役立つ確率論を論じる世界的に有名な専門家となった。 不確実性に関する著書(『まぐれ──投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか』、『ブラック・スワン──不確実性とリスクの本質』、『反脆弱性──不確実な世界を生き延びる唯一の考え方』、『身銭を切れ──「リスクを生きる」人だけが知っている人生の本質』)は41言語に翻訳された。 タレブに会い、湖北省から発生した今回の新型コロナウイルスについて話を聞いた。この危機がグローバル化や金融に及ぼす影響、極端な事象への向き合い方、極端な事象が引き起こす恐怖心について語ってもらった。タレブの現状分析は以下のとおりだ。 「見くびってはならない。隔離措置は当然だ」 ──今回の公衆衛生