「この世界において、すべては、一巻の書物に帰着するために存在する」。19世紀フランスの詩人ステファヌ・マラルメの言葉だ。この一文でさえその真意を理解しようとすれば万巻のマラルメに関する研究書や論文が必要だろう。だが紙幅と何よりも能力の問題から、ひとまず学生が教科書の偉人の肖像に落書きをするような気ままさで、この言葉を次のように読み変えながら本の世界の広がりについて考えてみたい。「一冊の書物すら、達するためには世界の全てが必要だ」と。 (構成・渡辺明日翔) 本から本へと「渡り読む」ことの意味 外国語の書籍を考えるのが最も分かりやすい。今、目の前に戯曲『リチャード三世』の原書があるとしよう。この15世紀イングランド宮廷の、権謀術数が張り巡らされた政争を題材に採り1世紀後のシェイクスピアが執筆した作品を、21世紀に生きる日本人がそのまま理解できるだろうか? いや、まずは辞書が必要だろう。それも、
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