介護と医療の足元で:1(マンスリーコラム) 「町内会やめていいかな?」 埼玉県内に暮らす母親から、今春こんなことを言われた。実家では、脳梗塞(こうそく)による後遺症に加えて肺がんを患う80歳近い父親を、70代後半の母親が支えている。私は東京都内で家族と暮らし、2週間に1回程度、実家に帰っている。 私は「えっ」と耳を疑った。医療・介護の現場や政策を取材していると、これからは「地域包括ケア」が重要で、住み慣れた地域の医療や介護とともに、住民同士が地域で助け合うネットワークづくりが大切だ、という話をよく聞いていたからだ。 母親は「前の家も裏の家もみんな抜けているの。(同じ時期に引っ越してきたご近所は)家族が病気だったり、介護を受けていたりするから」「もう年だから役員をやる余裕がないし、(役員改選の)くじ引きで当たったら大変だから」という。 埼玉県は東京への通勤が便利なベッドタウンとして、昭和の高