I. はじめに ヒトの脳と脊髄は3種の結合組織性の膜、すなわち硬膜、くも膜、軟膜におおわれている。硬膜は厚い線維性の膜で、中に血管や神経を含んでいる。くも膜は薄い膜で、突起を出して軟膜とつながっている。軟膜は脳表面を直接おおう血管の多い薄い膜である。くも膜と軟膜の間のくも膜下腔は脳脊髄液をいれている。脳脊髄液は、一層の脈絡上皮層と軟膜が接している脳室(側脳室、第三脳室、第四脳室)内の特定の部位から突出した脈絡叢という組織で作られる。このように、脳は液体にひたされた柔らかい器官で三重の膜により保護されている大切な器官である。また、脳硬膜は内外の2層から成り、脳の被膜であると同時に頭蓋骨内面の骨膜である。特定の部位で、2層の間に硬膜静脈洞を作る。脳脊髄液は、くも膜下腔から大脳の天井で静脈洞へ突き出しているくも膜顆粒を通して静脈中へ吸収される。脳の血液はここへ集められて内頸静脈へ流出する。なお、